Back to the History 05 : ワンダーフォーゲルの歴史を知る

渡り鳥のように軽やかに自然を楽しむ渡り鳥のように軽やかに自然を楽しむ

 ワンダーフォーゲルって何?」と思う世代が増えてきました。略して「ワンゲル」とも呼ばれ、1970年~80年代には大学の部活動やサークル活動として人気があったアクティビティです。その後、華やかなアウトドアスポーツが次々に登場してくる中で少し影が薄くなった感がありますが、やってみると、自然を愛し自由な精神を尊重する人間味あふれるアクティビティだということが分かります。ちなみにワンダーフォーゲルとは、ドイツ語で「渡り鳥」という意味です。その名の通り、渡り鳥のように自由な心で、小さなリュックサックを背負い、軽装で1本の杖と簡単な食事を持って山林を歩き回って、心ゆくまで自然を楽しむことを意味しています。

若者たちの自由な精神と抵抗運動

 ワンダーフォーゲルの発祥は、1890年にベルリン郊外のまちシュテグリッツにあるギムナジウム中等高等学校で速記を教えていた大学生のヘルマン・ホフマンが生徒とともに行った森の散歩旅だったといわれています。  その後、1901年にホフマンの教え子のカール・フィッシャーがリーダーとなり「ワンダーフォーゲル学生遠足委員会」をつくりました。彼らが暗黙のルールとしたのは、家庭や学校の制限や指示を受けず、自分たちで決めたスタイルで行うこと。たとえば、食事は野外で自炊し、農家の納屋を借りて宿泊し、自然を体験し、自然から学ぶといったことでした。  実はこうしたルールや活動の背後には、たんなる遊び心だけではなく、「体制に対する若者たちの抵抗運動」がありました。このようなワンダーフォーゲルのアクティビティと抵抗精神はセットになって大学生の間にも広がってゆき、社会的な拡大を見ましたが、やがて起こった2つの世界大戦が大きな原因となって、終息の方向に向かったのでした。

ドイツブームから始まった日本のワンゲル

 一方、日本では明治時代以来、空前のドイツブームが続いていたことも追い風になり、1933年(昭和8年)に当時の内務省の外郭団体が国民歩行運動の先駆けとして「ワンダーフォーゲル部」と命名して、活動が始まりました。  第二次世界大戦後の1950年代には、国の青少年育成運動によってサイクリング、キャンプなどと並ぶ野外レクレーションのひとつとして民間に普及していくと同時に、数々の有名大学もワンダーフォーゲル部を創設し、その精神と活動を世に広めていく役割を果たしました。  以来半世紀が経ち、今またワンダーフォーゲルが注目されはじめようとしています。  自由な精神、自然を愛する気持ち、仲間とともに過ごす時間。こうした素敵なものがたくさん詰まったワンダーフォーゲル。あなたも小さなリュックをしょって、始めてみませんか。

参考資料
『ワンダーフォーゲル活動のあゆみ 学生登山の主役たち』城島紀夫著 古今書院2015年8月発行